2m35。
これは、2019年2月9日にインドで行われた室内陸上競技大会で、日本の戸邉直人選手が出した記録です。
世間ではあまり注目されていませんが、この記録は13年振りの走り高跳びの日本新記録です。
この記録はどれだけすごいのか。
以前の日本記録は、2006年に醍醐直幸選手が記録した2m33でした。
この記録を2cm上回り、今期世界ランキング5位に相当します。
たった、2cmかと思うかもしれませんが、走り高跳びでの2cmはメダルを獲得できるかどうかを左右するほど大事な記録です。
今回はその戸邉直人選手についてまとめました。
また、手前味噌ですが、私自身高跳びの経験があるので、効果的な練習方法にも触れたいと思います。
戸邉直人選手について
生い立ち
戸邉直人(とべ なおと)選手は、千葉県出身1992年生まれの26歳。
身長、194cmと長身です。
戸邉選手は、中学時代からすでに頭角を現します。
中学で全国優勝を果たし、専修大松戸高校、筑波大学と進学します。
数々のタイトルを手にしてきた戸邉選手は、大学卒業後、実業団には所属せず海外に拠点を移しています。
戸邉選手は現在、走り高跳びが盛んで施設環境が充実しているエストニアで練習し、ヨーロッパ各地で行われている試合を転戦しています。
戸邉選手の特徴
戸邉選手は、海外選手にも引けを取らない194cmという長身とスピードを活かした跳躍をしています。
ゆったりとしたランニング動作から上手く加速し、ロスなく前方向の力を跳躍力に変えています。
このことから、しっかりとしたウエイトトレーニングも行なっており、身長、筋力、スピードと三要素がバランスよく噛み合っている選手です。
走り高跳びはメンタルのスポーツ
では、戸邉選手は果たして東京オリンピックでメダルを取ることは可能なのでしょうか。
これについては、まず走り高跳びというスポーツの特性を理解しなければなりません。
走り高跳びはメンタルのスポーツと言われているほど、精神面が大事になってきます。
それはなぜか?
100mなどの種目はゴールして初めて自分が何秒で走ったのかがわかる種目です。
しかし走り高跳びという種目は、あらかじめ「この高さを跳んだら新記録だ。」と記録に挑む前からわかってしまうからです。
よって、自己ベストの記録よりもアベレージで判断する方が、その選手が勝負に強いかどうかの判断材料にふさわしいのです。
東京オリンピックでのメダルの可能性は?
戸邉選手のアベレージを見てみると、2m35は一回しか記録していません。
メダルの獲得ラインは2m30から2m35のラインで推移しているので、戸邉選手が今後いかに高いアベレージを記録できるかが大事になってきます。
戸邉選手のメダル獲得は不可能とは言えませんが、今の時点だとかなり難しいのではないかと予想されます。
しかし、恵まれた体格や身長、筋力、スピードのバランス、また東京オリンピックを見据えたトレーニングもするでしょうから、2020年に戸邉選手がメダルを獲得することは決して不可能ではないと思っています。
今後の戸邉選手の活躍に期待しています。
走り高跳びで良い記録を出すトレーニング方法
学校の体育の授業などではよく行われている走高跳。
基礎的トレーニング方法が記載されている本などはありますが、実際に専門的な指導内容が記載されている本やインターネットサイトはほとんどありません。
実は私自身競技経験があるので、ちょっと脱線しますが、少し専門的な話を初心者にもわかりやすくお話ししていこうと思います。
スピード主体型とパワー主体型の跳躍スタイル
走高跳の専門的なトレーニング内容が記載されているサイトや本が少ないのは、走高跳は陸上競技の中で一番動作に個性が強く、答えがない種目だからです。
私自身も走高跳に約15年以上取り組んできて、様々な選手を見てきましたが、比較的体格の良い選手は助走のスピードが5~6割で比較的ゆっくりで跳躍するスタイルであったり、スプリントが得意な選手は助走スピードを8~9割のスピードで行い、その速度をそのまま上方向の力に変換するスピード主体型の選手など様々です。
これは、筋肉や腱の使い方に違いがあり、前者は跳躍時に腱よりも筋肉を主体として、後者は筋肉よりも腱を主体として使用するので助走時のスピードに違いがでてきます。
このように多種多様な跳躍スタイルがある走高跳はどの指導が正解ということを導きだすのが非常に難しい種目です。
一番効果的なのはウエイトトレーニング
上記の記述にあるように「これをやれば必ず記録が延びる」と言うことの難しい走高跳ですが一番効果的なのはウエイトトレーニングです。
ウエイトトレーニングというと一般的に重いダンベルを持つ、ベンチプレスやスクワットなどを想像しがちですが、軽いウエイトを持ち上げながら行う動作運動もあります。
これを走高跳の踏切動作に連動するような形でトレーニングを行うことで、パワー主体の選手もスピード主体の選手も最後の踏み切る動作は変わりませんので、両者共通で行うことができます。
具体的には、片足スクワットジャンプがあります。
まずは片足スクワットジャンプですが、これはビールケースのような台を用意し、片足ずつそこに足をかけジャンプしていく動作になります。
この動作を、20kg程度の重さを担いで10回×5セット行うことを基本とします。
またジュニアやシニアの選手は重さを調整すれば発達段階に合わせたトレーニングを行うことができます。
私自身、片足スクワットジャンプのおかげで現役時代は15cm以上記録が伸びました。
総合的な要素が他にあるかもしれませんが、このような方法を取り入れてから急激に記録が伸びたので私自身は、最も効果的な方法だと信じています。
今回は、最も効果的な方法のみを取り上げさせていただきました。
もちろん、ウエイトトレーニングの他にも100m~300mフラット走なども必要ですが常に心がけることが必要なのは競技動作と練習動作が常に類似しているということです。
多くの選手の記録が向上し、日本の走高跳が盛り上がることを期待しています。
(t2)