北方領土の返還を巡って、日露関係がよくニュースで報道されています。
必ずしも良好であるとは言い切れない両国ですが、柔道がその架け橋になるかもしれないということはご存知でしょうか。
プーチン大統領と柔道
柔道は日本発のスポーツで相手への敬意、立地振る舞いなど勝敗以外の面も重要とされています。
オリンピック種目としても認められ、世界中で愛されているスポーツです。
そんな柔道をプーチン大統領は13歳からはじめて、現在では黒帯保持者です。
子供の頃「問題児だった」と語るプーチン大統領ですが、柔道の精神や礼に触れ、心を入れ替えたと言います。
プーチン大統領は、自分の性格を「短気ですぐ頭に血が上る方だ」と言っています。
そして、それが好ましくない行動だということを、柔道を通して学んだのだそうです。
自分の気持ちを抑えて、素早い反応、素早い対応をすることが良い結果を出すには効果的であり、そうして初めて最高の結果が出せるとも話しています。
「大切なことは、すべて柔道から学んだ」というプーチン大統領は、柔道の練習で首脳会談を遅らせることもあるとか。
「プーチンと柔道の心」という書籍には、そんなプーチン大統領のロングインタビューが載っていて、プーチン大統領がいかに柔道を愛しているかが伺えます。
柔道家 山下泰裕
対して山下泰裕(やました やすひろ)さんは、公式戦203連勝(引き分け含む)、外国人選手には生涯無敗(116勝無敗3引き分け)という偉大な柔道家です。
山下さんの最も有名なエピソードは1984年のロサンゼルスオリンピックでしょう。
2回戦で右足を負傷しながらも金メダルを獲得、決してあきらめない姿は国民に多くの勇気を与えました。
引退後は全日本の監督も勤め、現在は日本オリンピック委員会の常務理事になり、スポーツを支援する立場になりました。
山下泰裕とプーチン大統領
外交上は衝突することもあるロシアと日本ですが、プーチン大統領は柔道に非常に思い入れを持っています。
そして特に尊敬する柔道家のひとりとして山下泰裕さんをよく挙げます。
実際、プーチン大統領と山下さんは度々会っているのです。
出会いのきっかけは1999年に山下さんがプーチン大統領に柔道着を送ったことでした。
2000年以降ともに柔道を観戦したりと何度も会い、強い信頼関係がある二人。
2006年には日本柔道の聖地、講道館をプーチン大統領が訪れ、安倍首相、森元首相と対談しました。
その際も、政府の重役に交じって山下さんの姿がありました。
「日本の柔道が世界の柔道へと発展していくのはたいへん素晴らしいことだ。われわれにはもっと注目すべきことがある。それは、日本人の心や考え方、そして文化が柔道を通じて世界に広まっていくことだ」
「柔道は単なるスポーツではない。柔道は哲学だ。年長者や対戦相手を敬う。柔道は弱者のものではない。すべてに教育的な要素がある」
これはプーチン大統領が柔道について口にした言葉です。
山下さんは基本的には政治に不干渉の姿勢を示していますが、柔道と山下さんは日露関係に少なからず影響を与えていると言えるのではないでしょうか。
柔道の精神が互いに尊敬を生み、良い方向に歩み寄れたらいいのにと思います。
(oa)